プラズマ質問箱

No.005

ALE(Atomic Layer Etching)は次のステップに踏み出す時期

  • 半導体

最近のALE、特に異方性加工のためのPE-ALEの議論の方向が少々偏っている感じがしています; 手順に囚われ過ぎている。表現が宜しくない気もしますが、私が現役の終盤の頃に聞こえだしたALEの議論の幅が、もう一歩、深く・広く進んで欲しい、という思いからの意見ですので、ご容赦ください。
ALEは10年ほど前に、研究が盛んに行なわれるようになったと思います。 ①反応性材料が自己制限的に吸着(一層のみの吸着で終わる)→②ガスパージ→③Ar+イオン衝撃を受けた場所のみが、蒸発するための充分なエネルギーを得て脱離(エッチング)する。しかし、必要なエネルギーが高すぎて、下地にダメージが残る。 エッチングの進行を考えると、最表面のダングリングボンドだけがClでターミネートされた状態では、充分な蒸気圧を持てないのであるから、残った結合; 隣のSi、下層のSiとの結合を弱める作用を、次のステップで考える。
 Clではなく、Fであれば最表面に吸着するだけではなく、更に下層への反応が自発的に進んでしまい、等方的なエッチングが進むと思います。この様な自発的な反応が進まない(温度)領域で、異方性を達成するための方法論を議論すると、新しい何かが出てくるのではないか?と思う次第です。

質問者情報
  • 職業

    大学教員

氏名(ニックネーム)

はっちん

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回答1

ご意見、ごもっとも考えます。異方性ALEは言葉の通り、原子層単位でのエッチングを、異方性を持たせて進める事を最優先に考えるべきと思います。この方向で、今後の研究方針をお示しする事を以て、回答としたいと思います。まだ明快な解答は得られておりません。

 微細加工を達成するための異方性ドライエッチングは、被加工物である固体材料に何らかの作用を加える事で、方向性を持った(異方性の)化学反応を起こさせて、揮発性の反応生成物として気化させて除去していく事で成り立ちます。この反応を原子層一層ずつ、下に残る材料にはダメージを残さない様に制御しながら進める事が、異方性ALEの本質であると考えます。
 理想的な異方性ALEの難しさは、ご質問にもある通り、被エッチング膜が三次元的に結合しているところに、裸になった最表面のみからアクセスしなければならない所にあると思います。この方法論を高度化させていく事が、理想的な異方性ALEを実現するためには必要で、これが今後の研究のターゲットになると思います。
 隣り合った原子、下層の原子との結合を、如何に一原子層単位で切断するか?
 方策としては、入射するイオン(種類、エネルギー)、ラジカル(種類、エネルギー)と、基板温度の超精密制御による、ボンドエンジニアリングを進めると同時に、表面における原子層反応のIn-situ計測を基軸にした、超高度シミュレーションとを融合させる事で、堅牢な理論構築を進める事が必要と考えます。
 被加工膜は、金属・半導体・誘電体とあらゆる材料が対象となりますが、原理的な考え方は共通すると思います。

 最後に、良い示唆を頂いたので、センターで遂行しているCASPPやCGDPでもテーマとして取り上げるべく検討いたします。

回答者情報
  • 職業

    大学教員

氏名(ニックネーム)

ドライエッチングの蛙くん

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