プラズマ研究・開発に夢中な

活動中の研究者紹介

  • 半導体

  • 氏名

    竹内 和歌奈(タケウチ ワカナ)

  • 所属

    愛知工業大学 工学部電気学科  准教授

SiC研究で未来を編む―暮らしと研究をつなぐ、ものづくり研究者

ものづくり王国と呼ばれる愛知県で育った竹内さんは、こども時代から鉱石や地球の成り立ちに興味を持って、理科の本を夢中で読んでいました。その頃に芽生えた「もっと知りたい」という思いを胸に、試行錯誤をして実験を繰り返す中で、未知の世界から新たな知を見いだす研究の道へと向かいました。大学院時代、GaNを用いたパワーデバイスの研究や、カーボンナノウォール(CNW)の成長に取り組んで、名古屋大学で博士を取得しました。その後、半導体材料と成膜技術を軸に、2015年からSiC材料の研究を始めました。現在、SiC材料の優れた物性を活かし、パワーデバイスの技術開発に加えて、再生医療での細胞足場材料や、水素製造に用いる電極のコーティング材料としての応用にも挑戦しています。

専門分野

半導体、結晶成長、薄膜堆積、デバイス・欠陥評価、SiC

略歴

愛知県出身。2006年に愛知工業大学で博士前期課程を修了し、2009年に名古屋大学で博士(工学)を取得。その後名古屋大学で研究員および助教を歴任し、2018年に愛知工業大学の准教授に就任。

趣味

ものづくり、料理、手芸(刺繡など)、歌を歌うこと

SiC薄膜コーティング技術の応用展開

SiCとはケイ素(Si)と炭素(C)で構成される化合物半導体材料です。高耐熱、低電気抵抗、ワードバンドギャップという特性があり、次世代のパワー半導体材料として、世界中で活発的に研究が進められています。こうした優れた物性によって、SiCはパワーデバイスにとどまらず、水素エネルギー(耐腐食性が求められる電極材料)や再生医療(導電性を活かした細胞足場材料)など、さまざまな応用面で、SiC薄膜コーティング技術が注目されています。

竹内さんは、SiCコーティング技術を用いて、パワーデバイス、細胞の足場、電極材料の開発に取り組んでいます。応用面の広がりは、異なる専門分野の研究者との協力と融合によって推進され、こうした取り組みこそが持続可能な社会の実現に向けた道だと信じています。

仲間の支えから、子育てと研究の両立

2012年、名古屋大学に勤めていた竹内さんは娘さんを出産しました。こどもができてから、生活のリズムが大きく変わって、仕事の仕方も見直すようになりました。当時、男女問わず、子育てに苦労する同僚が多く、そんな職場の仲間が竹内さんを支えてくれました。子育てを経験された同僚からのアドバイスや子育て中の仲間と情報交換をしながら、一歩ずつ苦労を乗り越えていきました。周囲の理解もあり、1年3ヶ月の産休・育休を取得し、その間子育てに集中することができました。

しかし、育休明けに職場へ復帰すると、子育てと仕事の両立の難しさに直面しました。特に最初の3年間は、朝までぐっすり眠れず、日中の集中力が続かず、仕事に身が入らない日々が続きました。その苦悩を抱えていた竹内さんは、子育て仲間と励まし合いながら、少しずつ「自分らしい働き方」を取り戻していったと言います。そして、娘さんが大きくなり、研究に集中できる時間が増えることで、かつて子育てを通して苦楽を語っていた仲間と、自然に研究の話をする機会も増えていきました。研究分野は異なっていても、異分野融合という形で「何か一緒にできないか」を議論し、共同研究をする仲へと発展しました。竹内さんは、子育てを通して職場の同僚や子育て仲間との関係に何度も助けられました。そして、その仲間と共に研究にも取り組めていることが、何よりの喜びだと語ります。

 子育てと仕事の両立を考えている方には、「一人で頑張りすぎず、職場の同僚にサポートをお願いしたり、職場等の子育て支援制度があればそれらを積極的に活用することがおすすめです」と竹内さんは言います。また、家庭では、男女が対等な立場で子育てなどに関わって、家族全員が積極的に参加することが大切ではないかと言っています。

大胆な発想から、生まれる「あかし」

休日には親子で過ごす時間が多いです。手芸が趣味の竹内さんは、娘さん用のポーチなどで、娘さんの好きなデザインを刺繡に落とし込んでいました。時々、絵を描くのが得意な娘さんと一緒に、仕上げのデザインを相談しながら、作品を完成させることもあります。普段は、親子の時間に、それぞれが自分の作品を作って楽しんでいます。竹内さんからいただいた娘さんの絵を見ていると、色の使い方や自由な発想に、ハッとさせられることがありますし、娘さんの絵と通じ合う部分もあって、親子の作品から互いの創造性が伝わってくるように感じます。

竹内さんにとって、これらの作品は人生のさまざまな節目で自分を支えてきた「あかし」そのものです。また、自分の名前にちなんだローマ字の「W」が付けられた作品は、竹内さんにとっても大切なものになりました。そして、今、研究者として取り組むSiC材料の研究も、持続可能な社会の道に向けた「あかし」の1つではないでしょうか。

趣味とは、ストレス解消の一つの方法

竹内さんの趣味を一言でいえば、「ものづくり」で、特に料理や手芸です。料理や手芸は研究とよく似ていて、事前の準備(食材や素材を組み合わせること)から、完成までの集中力が求められる点が共通しています。一度始めると、悩みごとが吹き飛び、頭がすっきりして作業に没頭できます。どんな食材と調味料を組み合わせれば、おいしくなるかを頭でイメージしながら、何度も試行錯誤を重ねて料理を仕上げていきます。まるで実験のように、工夫を重ねるほどに美味しくなる―それがものづくりの面白さでもありますよね。「その瞬間は、美味しい料理を作ることだけに集中していて、ほかのことは一切考えていない」と竹内さんは笑顔で語ります。さらに、学生時代には、バンドのボーカルを担当していた竹内さんは、今でも歌うことが大好きで、家でもよく歌っているそうです。

猛暑と冷房、そして異文化交流のサウジアラビア生活

2024年4月から2025年3月まで、夫と一緒にサウジアラビアに行きました。キング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)で研究を行いました。2019年9月から、サウジアラビアは観光ビザを解禁したため、外国人女性は伝統的な服装であるアバヤやヒジャブ(スカーフ)の着用義務がなくなりました。肌の露出を控えれば、普通のデザインの服装でも大丈夫です。サウジアラビアは典型的な砂漠気候で、夏(40~50度)は極端に暑く、冬(5~20度)は寒くなります。ただ、KAUSTは紅海に面した海岸沿いにあるため湿度があり日中の気温差はそれほど大きくありません。夏は非常に暑い(30~45℃くらい)ですが、冬(11月から2月ごろ)は20℃~25℃程度と思った以上に過ごしやすい気候でした。エアコンは大学内や家、共用施設、バスなど常に23度に設定されており(実験室の方がより寒い)、夏は特に外との温度差が大きくなります。夏は暑いので家からすぐにバスに乗って移動し、外にほとんど出ないこともあって、意外にも“寒い国”という印象が残っています。休日には、100キロほど離れた大型のショッピングモールやアジア系のスーパーに行って、日本料理に使う食材や調味料を手に入れて、調理を楽しみました。ただし、お酒禁止のイスラム国では、料理酒も手に入らないため、工夫しながら調理しました。また、驚いたことの一つが、公衆トイレの清掃です。トイレ内もエアコンが入っており、清掃員が常駐しているので、トイレを利用するたびに、清掃員がすぐに掃除をしてくれました。その仕事ぶりを見て、「やはりお金持ちの国だな」と感じました。この一年間で、様々な国の人と交流し、イスラム文化にも触れられて、貴重な異文化体験と思い出ができました。

研究の道へ進んでいる若者たちへの言葉

「研究は今までにない新しいものや現象を発見できることがあるから面白い」と語ります。それが、何に使えるのか、すぐに分からないかもしれません。でも、新しい現象に出会ったときのワクワク感は、何にも代えがたい体験です。研究では、うまくいかないことも、失敗することも、たくさんありますが、全力で取り組んだ経験は、たとえ結果が出なかったとしても、必ず自分の糧になります。だからこそ、迷ったときこそ、後悔のないように、どんなことにも全力で挑戦してほしいです。

Motto

研究でも、遊びでも、全力でやる

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